ドイツZDFテレビ(フクシマ)最悪事故から2年、除染・甲状腺がん



ナレーション:
時速が最大で1000キロにも及んだスピードで津波が日本の沿岸に押し寄せたのは2年前のことである
ここ富岡町では波がほぼ30メートルの高さで襲い、断崖を水浸しにした
私たちは去年ここを一度訪れているが、今も状況はあまり変わっていない
がれきを取り除く作業はほとんどの市町村で完了しているが
ここではなにも行われていない
「理由は簡単です」と原子力エンジニアの名嘉幸照氏が語る
彼はかつてここで暮らしながら、仕事をしてきた人だ

名嘉幸照氏:
「ここは今でも立ち入り禁止の警戒区域なので
津波の被害の後始末ができないのです」
「ここを見るのは、非常につらいです」

ナレーション:
富岡町は立ち入り禁止区域に入っている
ちょうど福島第二原発と第一の間に位置している
いや、というよりはかつての第一原発の名残というべきだろうか
通行許可証を手に、防護服で身を固め、中に入ることが許される
そして防護服にはもちろんガイガーカウンターが欠かせない
これで、警戒区域内での滞在中にどれだけ被ばくしたか測定する
チェックポイントで身分証明書や許可証がチェックされ
ここからゴーストタウンが始まる
放射線量が高すぎてここには人が住むことはできない

名嘉幸照氏:
「ここでも除染を始めるそうです」
「少なくとも部分的に」
「でも政府が町全体、この地方全体を除染できるとは思えません」

ナレーション:
しかし政府はそれこそを目指している。
チェルノブイリのように、事故があってからこれだけ経つのに
今だに立ち入り禁止区域がある、そんなことにならないよう
日本では放射線で汚染されたゴーストタウンをまた甦らせようというのだ
それを説明するのが環境省の除染チーム担当の小沢晴司氏だ

環境省除染チーム小沢晴司氏:
「私たちが行う除染地域は、住民の方々が長いこと生活し、仕事を営んできた場所です」
「ここには畑、森、町、川や海があり」
「どれもが皆、強いつながりをもっています」
「この場所は、住民たちにはとても重要な意味があるのです」
「ですから除染作業をする際には、そのことを配慮しなければなりません」
「そして仮設の住宅などに暮らしている住民が、故郷に帰れるようにしてあげたいと思っています」

ナレーション:
環境省が開いている除染情報プラザでは、除染担当員が
除染作業のプロセスを分かりやすく説明するモデルを見せてくれた
モデルを見る限り、念入りな庭仕事、という感じだ

オガサワラ カツヒコ:
「どの除染作業でもまず取り除かれたものが
このフレキシブルコンテナの中に収集され
この中で保管されます
このフレキシブルコンテナの紫外線耐久年数を検査しましたが
3年から5年は使用に耐えます」
インタビュアー:
「このコンテナは放射線も遮断するのですか?」
オガサワラ カツヒコ:
「いいえ、放射線は遮断しません」

ナレーション:
土壌を掻き、レーキでかきならし、つるはしで掘り返して
放射線で汚染された表土を15cm削り取る
潅木を刈り込み、落ち葉を掃き集め、線量を下げる
まったくヘラクレスの大仕事である
線量が一番高い地域だけでも、ほぼザールラントに匹敵する広さだ
福島の山奥で私たちは除染作業に携わっている作業員の一人と落ち合った
政府とやくざが怖いので顔も名前も隠しておきたいと言う
彼が言うには、やくざがこの除染という利得の多い仕事のほとんどを取り仕切っているという
公には政府は作業員に、危険手当を含め一日当たり約27000円払っている
作業員は線量の高い地域で働かなければいけないからである
しかし、そのうち実際に作業員の手に渡るのはごく一部だ
彼はたとえば約1万円しか受け取らなかったという
残りはすべてやくざにピンはねされるのだ
作業員は嘘をつかれ、騙されているという

作業員:
「作業の始めに仕事の説明会があったのですが」
「そこでは20km以内の警戒区域で働くなどということは一切言われませんでした」
「したがって、危険手当をもらう権利があるということも知りませんでした」

ナレーション:
彼は騙されたことを知ってその会社をやめ
2日後に他の会社で働き始めた
支払は40ユーロ多くなったが
この会社は除染作業をあまり真剣に考えていないという

作業員:
「集めたものを除染区域と指定されている区域の反対側に持っていって捨てろ、という指示を受けました」
「それで指示に従い、とにかく全部反対側に持っていって捨てたんですね」
「どうして反対側に持っていって捨てるのかという理由に対しては」
「そこは除染区域に指定されていないので」
「そこに少しばかり汚染された枝が落ちていても問題ない、ということでした」

ナレーション:
しかし、こうして放射能物質が森のもっと奥深くに投げ込まれていいわけはない

作業員:
「ずっと急な斜面で働いているので、集めたものを上まで運ぶのはかなりしんどいのですが」
「上で監督が見張っていて、とにかく何でも下の川に投げ込め、と指示しました」
「最初は信じられなかったんですが、2度も3度もそう言われ」
「その指示がだんだん命令調になっていき」
「いいからさっさと早く川に投げ込め!とどなられました」
「それで私も、ほかの作業員と一緒にその指示に従わざるを得ませんでした」

ナレーション:
彼の話が正しいことを証明する情景があったが
ここでは法的理由からお見せすることができない
放射能のゴミを川に放棄? そんなことがあっていいのだろうか?
環境省の除染担当官に聞いてみたが、まさに役人の答えとしか
言いようのないものが返って来た

小沢晴司氏:
「そのようなことがあったことに関しては本当に残念です」
「そのようなことが二度と起こらないようにこれから厳重にチェックし」
「その旨各会社にも申し伝えました」

ナレーション:
しかしたとえ誰もがその指示に従ったところで
原子力のゴミのきちんとした処理は、何世代にもわたる問題となるだろう
福島だけでなく周辺の警戒区域外でも
プラスチックの袋に一時的に土壌や潅木が詰め込まれ
ただ外に放置されているだけだ
これらの袋は放射線を遮断することはできないが
風や雨で散乱するのを防ぐためだという
警戒区域外で除染の状態を測定している環境保護団体グリーンピースの
メンバーに会った。彼の判断は明快だった。

グリーンピースメンバー:
「これは即席の原子力廃棄物の保管所です」
「落ち葉、枝、土などを道路、森や野原から集めたものを並べている」
「これを見るだけで、こんなに大きい地域を除染しようなどという
目論見が、いかに不可能かということを示しています」
「こんなことは希望のない企てに過ぎません」

ナレーション:
しかもこれらのプラスチックの袋は3年から5年しか耐久性がない
それまでにはこれらの汚染物質はちゃんと処分されなければいけないのだ
もっとひどいのが、ここ福島市のような住宅地域での除染である
一時的な保管場所さえつくるのが困難なため
ずっと恐ろしい安易な解決策がとられている
それを証明するのがここにお見せする写真だ
まず放射線で汚染された表土を剥ぎ取り
それを袋に詰め、穴を掘り
そこに袋を並べ、新しく土をかけて
はい、除染完了、というわけだ
こうして公園の地面の下に原子力廃棄物の保管場所がある
これらの写真は、ある匿名希望の学校の教師が撮ったもので
どんなに無責任に除染作業が行われているか見せてくれた

学校教師:
「本来なら、剥ぎ取った表土は深く穴を掘って埋めるべきなのですが」
「しかし水道管や電気が通っているためそれができないので」
「それを家の前に積み上げて、ただプラスチックシートをかけて終わりなのです」

ナレーション:
放射線を出すゴミが居間の窓や子供たちが遊ぶ公園の真下にある
大量の袋が外に並べられ野放しにされている
官庁は「問題ありません」だ

小沢晴司氏:
「大量に保管している場所に関しては、3年間ということで住民の了解を得ています」
「3年以内にこれらを中間保管施設に運び出すことになっています」

ナレーション:
ここでの難点はしかし、これだけ大量の放射性物質を保管できる中間保管施設もないし
ましてや最終処分地もないことだ。
最終処分地は日本だけでなく、世界のどこにもまだないのである。
ここは福島県郡山市。
このカフェで、近辺に住む、子供を持つ不安な母親たちが集まる。
放射線の影響を案じながらの生活は、心理的な負担が増すばかりだ。
子供たちの将来を考えると、皆心配でならない。

ワタナベツモミさん:
「子供が健康に成長してくれるだろうかと考えると不安でなりません」
「彼らも普通に子供を生んでいけるようになるのか」
「私たち大人はもう歳をとるだけですが、これから人生の始まる子供たちが気になります」

ナレーション:
このカフェでは、心配している母親たちが
放射線汚染のない遠い地方でとれた野菜や果物を購入できる
それだけではなく、スーパーで買った野菜などをここで測定することもできる

ノグチトキコさん:
「これは食品用の放射線測定器です」
「自分たちが口にする食べ物が放射線で汚染されているかどうか検査します」
「この容器に食品を入れます」
「そしてこれごと測定器の中に入れます」
「測定が終わるまで、約30分かかります」

ナレーション:
測定結果は、このようにコンピューターで表示される
これまで測定した中での最高値は、ある母親の庭で取れた葉っぱで8000ベクレルあったそうだ
このグラフは私たちにはかなり複雑に見えますが
彼女は原子力物理学専攻なのか、訊いてみた。

ノグチトキコさん:
「いいえ、私はただの主婦です。ここには専門家は誰もいません」
「ですから、測定してもその値が普通なのかどうかという返事はできません」
「これ、食べられますか、と聞く人が多いのですが、私にはそれはわかりません」
「専門家ではないので、私たちには測定結果を伝えることしかできないのです」

ナレーション:
しかしこうした測定を行わずにいられないということが
すでに政府や県に対して深く抱いている懐疑の念の表現だ
彼らはことあるごとく繰り返してきた
「心配ありません、大丈夫です」と。

ノグチトキコさん:
「黙ってても、政府は何もしてくれません」
「大丈夫、という答えが返ってくるだけです」
「そんな答えじゃ安心なんてできません」

ソエダイチヨさん:
「私は、県は何か重大なことを隠しているんじゃないかと思っています」
「それだけじゃなくて、何に関しても問題ない、と答えるのも」
「きっと計画の1部なんです、私たちがそれを誰かに伝えないように」

ワタナベツモミさん:
「事故があった後も、マスコミ、政府や県からは、信頼できる情報は一切入りませんでした」
「それで今、急に信じろといわれたって、できません」

ナレーション:
若い母親たちをことに不安にしているのは、甲状腺がんの危険だ。
チェルノブイリ事故の後、甲状腺がんがことに頻繁に発生したからだ。
それで福島県ではこれまでに36万人の18歳未満の児童を対象に甲状腺検査を行った。
これまでに3人の児童に甲状腺がんが見つかり、7人に甲状腺がんの疑いがあるとされている。
この検査を担当している医師は、心配する理由はない、という。

安村誠司氏(福島県立医科大学医学部教授):
「チェルノブイリでの調査を見ますと、事故後4、5年経ってからやっと甲状腺がんの発生が増加しています」
「それで、今回甲状腺がんが3人に、その疑いが7人にあるという結果は、被ばくとは関係がないと考えています」

ナレーション:
そのような発言は非科学的だ、と語るのは
北海道の国立がんセンターのガン専門医、西尾正道氏だ。

西尾正道氏(北海道国立がんセンター):
「チェルノブイリでは事故後4、5年はまったくそのような調査が行われなかったのです。」
「ですから事故2年後で兆候が現れていた人があったかもしれないが」
「それはただ調査されなかったからわからないだけなのです」

ナレーション:
西尾氏は講演の中で、事故が原因で起こる結果が政治的な意図でもて操られていることを非難する。
子供が一年で被ばくする際の最大許容線量を簡単に20倍にしたことを
彼はまともな理性ではないと批判し
食品に含まれる放射性物質の許容量引き上げに関してはグロテスクだと語る。
例としてあげるのは、飲料水の200ベクレルだ。
国際的な指針では、原発施設からの排水ですら、90ベクレル以上ではいけないことになっているのです。
200ベクレルといえば、それの2倍以上なのですから大変な量です。

女性B:
「それじゃあ、原発施設から排出される水を飲む方が安全なんですか?」
西尾正道氏:
「そうですね、そういうことになります」

ナレーション:
今までに検査された児童の40%で異常が発見された。
そのほとんどは結節やのう胞だ。
それがすべてがんに発展するわけではない。
しかし高い数字は気になる。
まったく問題ありません、と担当の医者は軽く聞き流す。

安村誠司氏:
「これだけ大多数の児童を検査したことは今までになかったので」
「この40%という数字が高いのか低いのかということはわかりません」
「そして比較するデータが他にないので、今のところ」
「これが通常の数値なのだとみなしています」

ナレーション:
何もわからない限り、すべて大丈夫というのは
専門家の言葉にしては、不思議な論理だ。
そう、そしてこの原発の廃墟もまだある。
ここでの今の最大の問題は、行き場のない
高度の汚染水をどこに持っていくか、である。
この水は事故を起こした原子炉を冷やすために使われ、溜まる一方だ。
原発施設とその周辺はもうタンクでいっぱいで置き場がない。
こうして原発事故はまだまだ収束などしていない。

報告:ヨハネス・ハーノ
字幕翻訳:無限遠点


* 安村誠司氏は秘密会のメンバーです。
http://kingo999.blog.fc2.com/blog-entry-892.html





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