「フクシマの嘘」を制作したハーノ氏の著書「災害メイドインジャパン」のあらすじ

「災害メイドインジャパン」フクシマとその後
ヨハネス・ハーノ著
翻訳: フクシマの嘘の字幕を訳したドイツ在住の日本人

内容・あらすじ

 第2ドイツテレビ(ZDF)の中国駐在員として北京に住むヨハネース・ハーノ記者は、大震災の起きた2011年3月11日にちょうど、東京のTBSビル13階にあるZDF事務所にいた。大地震の恐怖に続き、津波が東北地方沿岸を襲い、福島第一原発事故へと突き進んでいく過程を、彼は不眠不休で日本からドイツへ報道し続けた。各国の在日本大使館を先頭に、外国人がどんどん東京を離れ関西に避難するか、母国に帰っていくのを傍目に、自分も幼い子供たちを妻と共に北京に残している父親として、ここで死にたくはない、と決断に迫られながらも、ジャーナリストとして求められている事実の報道をどうにか実現しようと、奔走する。彼には、当時の枝野官房長官や東電、保安院が発表する内容が、初めから信じることができなかったからだ。

 ハーノ氏はコソボ戦争でも報道を担当し、自らも死の不安に脅かされた状況での極限状態を知っているし、ジャーナリストとして宿命だとも思っている。それでも、それは単に「命を賭ける」ということとは違う。プロのジャーナリストとして危機状況を分析し、この危険なら自分の力で回避できる、ここまでは用心すれば大丈夫、という判断力が身についていると自負してきた。彼は自分の家族だけでなく、自分の元で働く同僚やその家族に対しても責任があり、どこかで限界の線を引き、「家族のもとに帰りたい者は帰るように」と言わなければならない立場にある。しかし、今回のフクシマ原発事故では、危機状況の判断ができないことを、彼は痛感する。情報がまばら、かつ曖昧で、爆発しても、何が起き、どの程度の放射性物質が放出されたのか詳しく誰も説明せず、当時の枝野官房長官、東電、保安院の「心配することはない」という宥めすかしのような文句ばかりが続くだけだ。25年前のチェルノブイリ事故の後ドイツも経験した放射能の恐怖をめぐるパニックを思えば、ハーノ氏には日本人の落ち着きぶりは不可解だ。本当はしかし、福島第一原発ではなにが起きたのか、そしてこれからなにが起きようとしているのか? なぜこのようなことになったのか? この根本的な、誰でもが当然もつ問いを彼は、ジャーナリストとしての使命として、なんの驕りもなく真摯に追及していく。彼は日本での仕事を通じ、あらゆる種類の日本人に接している。また、私利私欲を捨てて彼の仕事に尽力・協力する同僚や仲間にも恵まれ、敬愛し、長く友情を築いてきた友人もいる。こうして日本での取材や滞在を通じ、日本人や日本文化を高く評価してきただけに、3.11以来日本で起きていること、またそれで明らかになり始めたことが、彼には納得がいかない。そして、報道するためには、彼自身がまず事態を「把握」しなければいけない、と思うに至る。日本をたびたび訪れ、取材であらゆる人間や出来事に接し、報道に携わってきた人間として、彼の日本人に対する理解がどんなに深くても、それでも彼は、ドイツで生まれ育ち、西欧人の論理で物事を分析し、理論だてて理解しようとする人間であることに変わりはない。彼は、日本人の不思議さ、不合理さ、考え方や感情の表現方法の違いにこの災害を通じて改めて接し、幾度となく理解に苦しみ、不条理を受け入れるのに苦労する。しかし、彼の人間性の強さは、それを単に西洋人の目で糾弾したり 批判したりするのではなく、それをなるべくそのまま受け止めて、まっすぐに報道しようと努力する真摯な態度である。

 この本では、彼が自分自身の体験、苦悩、迷いなどさまざまな感情にゆれながらもほとんど不眠不休、無我夢中で報道し続け、情報収集し、できる範囲でそれを分析する様子が、まず順を追って書き記されている。これは、自分の日記や取材メモをもとに、彼があとから再構築した彼の「3.11から1週間」の記録だ。3月11日の地震発生から3月15日まではほぼ時間刻みで経過が書かれている。それから、彼は一時大阪に避難して仮の事務所をホテルに移し、そこから報道を続けるだけでなく、同時に東北への取材旅行を綿密に計画して実行に移す。山形、南三陸、気仙沼、福島、飯舘を訪れ、実際に津波で壊滅した村を見て回り、避難所を訪れて、家族や住む家など、すべてを失った人たちの話を聞き、目に見えない放射能の恐怖を実感していく。

 直接東北に向う高速道路は封鎖されているので別のルートが必要だ。ガソリンの確保も難しく、報告の画像をドイツに送るにも、電源がない場所もある。津波で村ごとなくなってしまった場所に降り立ったハーノ氏は、「これは、コソボで知った匂いと同じだ、これは死臭だ、この瓦礫の下にたくさんの屍が眠っているのだ」と胸が潰される思いをする。

 ハーノ氏は、不安、自己防衛本能、責任、忠義、友情、信頼、家族への愛などに引き裂かれ、生存にかかわる根源的な問いかけを続けながらZDF日本支部の責任者としてあらゆる決断を迫られた3.11から数ヶ月のことを、この本を書くにあたってもう一度振り返った。内容は、3.11以来人生観が変わってしまった日本人にとって、心に深く迫るものだ。彼のジャーナリストとしての真摯な姿勢と信念の実践は、名ばかりの日本のマスコミの報道記者たちに対する、間接的な批判とも捉えることができよう。無責任な東電や原子力ムラに対する怒りだけでなく、尊敬と感謝の念で彼が接している同僚・仲間との関係も、心を打つ。このような行動力ある、信頼できる仲間とのすばらしいチームプレイで、「フクシマの嘘」のようなドキュメンタリーも完成したのだということが、あらためて納得できる本である。







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